まるでそこに存在することが当然のように。




(アダム、か…)




赤く辺りを染める夕焼けの下で笑う彼を見ながら、もう一度その名前を心の中で呟いた。


それはとても幻想的な響きを持っていて。

純粋にぴったりだな、と思う。

隣に座る彼には似合う名前。
その存在を引き立てる名前。




(…だけど…)




だけど、私には絶対に手の届かない名前。

彼に似合うそれは私には眩しすぎる響き。

世界が違うとさえ思ってしまう。


それでも、隣で笑う彼の口元があまりに嬉しそうだったから。




「…花子」




そんな彼に誘われるようについ口を開いた私。




「花子っていうの」




口に出した名前は珍しくもなければ特別なものでもない。

謂うならば"平凡"。

けれどそんな名前がぴったりだと思った。