(あぁ、どうして)
どうしてそんなにも、心を揺さぶることが出来るのだろう。
風景に溶け込んでしまいそうなその姿にまた"綺麗"だと思った。
「…アダ、ム…?」
そしてその言葉を確かめるように声に出す。
思ったよりもその声は震えてしまっていたけれど。
呼び掛けるように真っ直ぐ彼の瞳に向かって。
その言葉が彼の名前なのだろうということはすぐにわかった。
そしてそれは彼が再び浮かべた笑みによって肯定される。
ふわりと、優しい木漏れ日の下に咲く華のような笑顔に。
それは先程までの綺麗よりも可愛いという表現がよく似合う。
──────────コポ、
私が見たかった微笑み。
風に乗せるように彼の口から紡がれた名前と浮かんだ微笑みは、あまりに自然にこの音の中に溶け込んだ。
世界を壊すこともなく。


