久し振りに感じたその感情に零れそうになった涙は、空を見上げて誤魔化した。
今、涙はふさわしくない。
「…アダム」
「…え?」
そんな暖かな色が包む空気に響いた声。
それは他でもない隣の彼から聞こえてきた声で。
呟かれたそれに空に向けていた視線を彼へと移す。
すると、ほぼ同じタイミングで彼の瞳がこちらを向いた。
カチリとうっすら茶色がかった彼の瞳と、私の濁り曇った瞳の高さが合う。
彼の綺麗な、未来を映すような瞳のなかに写る自分の姿。
その両目に写った情けない表情の私にツキリと胸が痛んだ。
「…アダムって、言うんだ」
瞳と同じ茶色い、少し長めの髪を風になびかせながらそう言って笑う彼。
柔らかく細められた瞳に思わず息を呑んだ。


