まさかこの景色を同じように感じる人がいたのかと、少し気恥ずかしい気分になる。
視線は相変わらず外の景色に向いたまま。
きっと隣に座っている彼もそうなのだろうと思った。
だってこんなにも美しい。
「私が生まれた海も、こんな色をしてたのかな」
ポロリと零れた言葉は心の中で呟くはずだったもの。
遠いいつかの日に私が生まれた海は、この景色のように空を写していたのだろうか。
いつか帰る海も、こんな色をしているのだろうか。
「…きっと綺麗な色だったよ」
彼の唇から柔らかく紡がれたであろうその声に、何故だかほっと息を吐いた。
何かを綺麗だ、何て思ったのは一体いつぶりだろう。
もう長い間、考えもしなかった気がする。
無くしてしまったとさえ思っていた。
いつの間にか私の世界はモノクロになってしまっていたから。


