どれくらいの時間が経ったのだろう。
気付けば隣からの音色は止んでいて。
微かに聞こえてくる鳥の鳴く声に思考が戻ってくる。
(…完全に浸ってた)
久し振りに気を抜いていた。警戒心を抱くこともなく。
ゆるゆると開く目蓋。
開けた視界の先では、綺麗な夕焼けが遠く見える町並みを色付けていた。
一色に見えてそうではない。
赤、オレンジ、黄色、茶色。
それぞれが更に幾つもの濃淡をつくり無数の色を織り成す。
まさに太陽の色。空を写した色彩。
それは大きな絵画を見ているような。
広がる海を見ているような。
そんな気分にさせられる。
「綺麗だよね」
"海の絵をを見てるみたいだ"
ふいに隣から聞こえたその言葉に素直に頷いた。


