(…あの絵みたいに綺麗な人)
今でも頭の中に残っている、幼いながらに心惹かれた絵本の挿し絵。
何度も何度も読んだお気に入りの絵本。
そこに描かれていた美しさに彼は似ていた。
木漏れ日がとてもよく似合う人。
その世界に浸るように、ゆっくりと瞳を閉じる。
太陽の光が目蓋に色を乗せて、いつもより少しだけ世界が明るいと感じた。
(少しだけ…休んでもいいですか…?)
誰ともわからない相手にそう問い掛ける。
すると隣から聞こえてきた緩やかな歌声。
今度のそれは先程までのものとは違って、鼻唄のようにただ口ずさむだけのものだったけれど。
それだけで十分だった。
心地いいことに変わりはない。
全身を包んでくれる声だから。
ただひたすらその声に思いを寄せた。


