けれど、何となく。本当に何となく、傍に感じる彼の体温が暖かいと思ってしまった。
何となく、彼の隣では息が出来るような気がしたのだ。
彼だけは、違う気がした。
この、酸素の薄い世界で。
普段感じてしまう緊張や戸惑い、嫌悪感や恐怖は一切感じない。
その理由は私にもわからなかった。
それは、本能の示すところ。
サァァアア...
木々の合間を風が通り抜け触れ合う葉がまた違う音色を奏でる。
揺れる影は世界を静かに覆って。
周りと切り離された木々と二人。
それでも不快だとは思わない。
お互いに何を話すわけでもなく、空を見上げながらその音に耳を傾けていた。
それはまるで幼い頃に読んだ絵本の中にいるような。
小さな一ページの中のような、不思議な感覚。


