君という海に溺れる





「……だもん」


「ん?」




そして小さく、小さく呟いたのだ。




「だって…ありがとうって…ごめんなさいって…いってくれないんだもん」




苦しそうに吐き出された言葉は、その小さな体には似合わない残酷なもので。

無意識にゴクリと喉が鳴る。




「おもちゃかしてあげても、ぶつかっても、いってくれないんだもん」




あぁ、この子はもしかして。




「ありがとうっていえないことなんて、あそびたくない」




そう言って、本当に悲しそうに揺れた彼女の瞳。

けれど決して涙は流れない。


痛みだけが浮かぶその瞳に、何故だか俺が泣きたくなる。


この子の心は周りよりずっと早いスピードで成長してしまったのだと、そう思った。