君という海に溺れる





「おねえさん!」




暫くして、再び聞こえてきた幼い声。


声のする方へ顔を向ければ、あの子が一生懸命こちらに向かって走ってくる。

足を踏み出すたび揺れる両サイドの髪。

ふわりふわりと動くそれは、子犬が尻尾を振っているようにも見えた。

その姿に何となくポッと暖かくなる胸の奥。




(ワンコみたい)




そう思いながら彼女がここに来るのを飼い主のような気分で待つ。

だんだんと近付いてくる彼女の小さな手には、白い何かが握られていた。




「はいっ!」




ぴたっと俺の前で立ち止まった彼女。

彼女はふふーっと嬉しそうに笑いながら両手を差し出す。


そこに握られていたのは、シロツメクサで作られた純白の冠だった。