君という海に溺れる





(おねえさん、か)




どうやら彼女は俺のことを女だと勘違いしているらしい。

多分、この長い髪と顔のせいだろう。

性別を間違えられるのは初めてではない。


それでも何故か嫌な気分にはならなかった。




(さっきまであんな嫌だったのに)




あの子が子どもだから、という理由ではないのだと思う。


きっと彼女が、あまりに綺麗な瞳をしていたから。

普段だったら絶対に気にするところなのに、今はそんなふうには思わなくて。


俺はただ言われた通り、その場で彼女の帰りを待つ。

子どもの言葉だ。

わざわざ律儀に待つ必要なんてないのに。

それでも居なくなったらあの子が泣いてしまうような気がして。

俺はそこから一歩も動けずにいた。