君という海に溺れる





「おねえさん、おうたじょうずだね!」




そう言って、その子は綺麗に笑う。



──────────コポ、



何の悪意もない彼女の笑顔に、体の奥が波をうった。




(…綺麗…)




こんなに純粋な笑顔、一体どれくらいぶりに見ただろうか。

どれくらいぶりに純粋に褒めてくれる言葉を聞いただろうか。


心に染みてくるそれは、こんなにも堪らなく嬉しくなるものだっただろうか。


まるで宝物のような笑顔に思わず見惚れてしまう。




「おねえさん、ちょっとまっててね!」




俺の前で笑っていた彼女はそう一言残すと、ベンチからするりとその体を降ろした。

パタパタと可愛らしい足音を立ててどこかへ走り出す小さな体。