君という海に溺れる





──────パチパチパチ




「…え?」




一曲全てを歌い終わったときだ。

その音が聞こえてきたのは。


隣から聞こえる、聞き慣れた拍手の音。

けれどそれは、俺が知っているものよりもずっと軽くて小さい。


不思議に思ってちらりと横を見れば、俺の隣には黒い髪を二つに結んだ小さな女の子が座っていた。

くりくりとした大きな瞳をキラキラと輝かせて。




(気付かなかった…)




いつからここにいたのだろう。

全く気付かなかった。

それほどまでに自分の世界に入り込んでいたのだろうか。


隣に座る彼女から向けられる熱い視線。

ジリジリと、肌が焼けるような。

そんな思いに駆られて彼女の方へ体を向ける。


そして、その瞳に捕まった。