君という海に溺れる





めちゃめちゃ近いらしいよ、と少し不貞腐れたように口をへの字に曲げる彼女。


その言葉に思考の波にのまれていた意識を戻せば、テレビでは新しく撮影されたばかりの見たことのないPVの一部が流れていて。


画面の向こうで撮影の時のことを話すあの人が、いつも以上に綺麗に笑っているあの人の姿が目に入る。




(相変わらず、綺麗な人だ)




そう思えば知らずのうちに上がる口元。

それとは対照的に下がる眉。


唇は想いのまま幸せを描くのに、揺れてしまう瞳は心の奥底を映して。

嬉しい気持ちと切ない気持ちが入り交じる。


綺麗という言葉が似合う人だと思った。

あの人のためにある言葉なんじゃないかと思うくらいに。

初めてその姿を見たときからそうだった。