私が貰った勇気の大きさはこんなものではなかったはずだから。




(あと、もう少し)




あと一歩が踏み出せたなら、きっと世界は変わるだろう。

たくさんの絵の具が彩る世界へと。




「…あの、さ」




震えを押し隠すように紡いだ声。

普段なら挨拶もそこそこに通り過ぎてしまう私がまだそこに立っていて。

あまつさえ声を発したからだろうか。

彼女が驚いたようにその目を見開いた。


そんな彼女の反応に内心一人で苦笑する。

そんな顔をさせてしまうくらい、私の態度は酷いものだったのだろうかと。




(そりゃそうか)




私が殻に閉じこもっている時間はきっととても長かった。

彼女たちにとってそれは私以上に長い時間だったかもしれない。