暗い暗い海の底の何を。


一体私の、何を知っているというの。


そう大声で喚き散らして、此処から逃げ出したいと思うけど。

体はそう叫び続けているけれど。

あと一歩のところで足がすくんでしまうのは、やっぱり私が弱いせいなのだろう。


私には長い歳月をかけて築き上げてきたこの鎧を脱ぎ捨てることが出来ない。


向けられるであろう視線に怯えて。

まだ見ぬ言葉たちに恐怖しているから。




(バカ、みたいだ)




何度繰り返しても足りない言葉。


成長しないな、と思いながら浅く息を吸い込む。

キシリと痛む肺の底。


飽きもせず同じ言葉を繰り返して、鞄の中に入れたままになっていた携帯電話を手に取った。


そしてまた溜息を吐くのだ。