「お疲れさまでしたー」
いつもよりワントーン高めの声。
口角と頬を上げて、目尻は下げて。
最大限の注意を払った声色で挨拶をしてから、バイト用の制服のままで歩き出した。
辺りの声が遠くなった頃、パタンと小さな音を立てて扉が閉まる。
漸く切り離された世界。
控え室の中で私の唇はふぅと生気のない息を吐き出す。
店先で保っていたはずの作り笑いも、一人になればあっという間にその姿を消した。
どっと疲れが押し寄せて使っていた筋肉から血からを抜けば、一番先に痛いと感じるのは頬と口の端で。
一体どれくらい力が入っていたのだろうか。
じわりじわりと顔中に広がっていく鈍い痛み。
そんな自分に小さな嘲笑が漏れる。