「…あー…」




溜息とともに吐き出した声は女のそれとは思えないほど情けなく擦れていて。

ほとんど音にならないまま静かな部屋に広がって、消えた。


パチンとシャボン玉が弾けるように。



何か、夢を見ていたような気がする。


何か、大切で儚い夢を。


しかしその内容はまるで思い出せない。


全てが陽炎の果てに揺らいでどこかにいってしまった。




(なんだったのかな…)




目を瞑っても、その景色は見えなくて。


思い出したいような、そうでないような。

そんな曖昧な夢。


でもきっと思い出すほどのものでもなかったのだろう。

感じるものも、残るものも何もないのだから。

そう勝手に結論付ける。

胸の奥から聞こえる悲鳴に無視をして。


寧ろ、本当に寝ていたのかも曖昧だ。

ただずっと暗い世界にいただけのような気もしている。


いつも意識はその狭間で揺れているから。