「やはり、来たか。」 月蝶の扉の前。 あの女、霞澄がダウンジャケットに身を包み、立っていた。 意気込んでいた俺は拍子抜けした。 「オーナーには言ってある。場所を変えよう。」 ただそれだけを言い、霞澄は俺に背を向けて歩き出した。 今、霞澄は俺に背を向けている。 今ならいつでも殺れるはずだ。 しかし、体が動かなかった。 殺せないというオーラが背中から感じられるからか、背中からなんて卑怯なことをしたく無かったか… どちらにしろ、俺は殺すことができない。