スコールは突然にやってくる そして私たちに思わぬ事態を巻き起こす

私たちがホテルに戻ると スタッフが彼を待っていましたとばかりに
駆け寄ってきた 彼に耳打ちする 

その後ろから 花柄のワンピース姿 に
ショッキングピンクの不釣り合いなローヒ-ル
長い黒髪に はっきりとした目鼻立ちの顔
きつい化粧 赤い唇 伸びた爪に派手なネイルが塗られている 
その左の薬指にはダイヤの指輪が光っている 

見覚えのないその女性は 私たちに向かって歩いてくる
ふたりの目の前で立ち止まった

「主人のお相手はどちらかしら」私たちを睨み 強い口調で言った
「やめなさい ふたりは関係ない」
「答えなさい どっちなの」私の顔を見て 最初より強い口調で言った
「向こうで話そう」彼が女性の腕を掴んだ
女性はその彼の手を振り払った
「私です」先輩が答えた

女性は先輩に向かって右手に持っていたセカンドバックを振り上げた
彼女に当たるそう思った瞬間 私は彼女の体を自分の方へ引き寄せ
自分の体で覆っていた 殴られる と 思った
バシッと強い音がした

「馬鹿のことをするんじゃない」

その声にとっさに閉じた瞳を開いた

私の瞳の前に彼の体が見えた
彼の頬から血がにじんでいる 

「ひどい人」彼の奥さんはその場に泣き崩れた

彼が奥さんを抱きかかえる 

その様子を先輩はじっと見ていた