廉said





「百合さんが目を覚ましました」

耳を疑った。

「……え?」

そして、掠れた声で聞き返した。

「とにかく一度帰ってきた方がよろしいかと」

帰るって、どこに…?

オレにはもう居場所はない。

「……無理、だよ。オレ帰らねぇよ」

「慎さんも貴方一人のせいじゃないとわかっております。大丈夫です」

何が、大丈夫なんだ。

何も知らないからそう言えるんだろ。

「そうじゃないんだよ。てか桜庭なんでいんの?」

「私は廉さんの「もういいって言ったはずだよ」

「廉さん…」

「何度も言うけど帰る気ないから。もう切るね」

「ま、待ってください!廉さ………」

一方的に切った電話。

オレはただただ動揺していた。

「百合……」

わかってることはひとつだけ。

オレはあの日からずっと
過去の過ちから逃げていた。

でも、もう…
逃げるだけじゃ、ダメなんだ。