昔々、うつくしい天女が水浴びをするために、ある湖におりたちました。


その姿を一目見た一本の木は、天女に恋をしました。みずからの青い葉を紅く染
め、どうにか天女に気付いてもらおうとしたのですが、天女は水浴びに 夢中です。

そこで木は天女の羽衣をかくし、代わりに、紅く染まった葉をたくさん水面に散
らしました。

水浴びを終えた天女は羽衣が消えていることに気づき、慌てふためいて探しまし
たが、みつかりません。とうとう涙を流し始めた天女に、木はささやき ました。

「おじょうさん、おじょうさん。泣くのはやめてください。そら、そこにある私
の葉をそのお体にまとえばよいのです」


天女は木の言葉通り、その真白の体に紅い葉を纏いました。木はうっとりと、そ
れをながめ、こう呟いたのです―――