ここで首を振ったら、どうなるのだろう。
仮にこの白い男が部屋に忍び込んだ強盗だったとして、わたしは被害を受けずに済むだろうか。
どのタイミングで隠し持ったナイフを突きつけられるのかもわからないのに。
頭の中は真っ白だった。
無意識のうちに、まるで脳より先に体が生きることを諦めたかのように、頷いていた。
「そうか、まあ知ってたけど」
「……強盗に、来たの?」
声が震えて情けない。目の前の男が、翡翠の目を細めて笑った。
なんて、綺麗なの。
「違う違う。悪い、怖がらせたな」
そっと頭を撫でられて、固まる。
なにこれ、なんの夢なの。ひどく現実的な感覚なのに、展開は妄想じみていて。
いきなり白い光とともにとんでもないイケメンが降り立つなんて、どこの漫画の世界よ。
科学者でも納得できるように誰か説明して欲しい。
「まあ、あるものを盗みに来たのには変わらねーけど」


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