そして今に至る。
今の回想は夢見る乙女の妄想なんかじゃない。
ガラスの破片が突き刺さった腕の痛みも、チカチカする視界も、白を身に纏う目の前の男も、すべて現実だ。
『――――?』
しばらくその見た目とそぐわない和室で身なりを整えていた男は、わたしの存在に気づくと何やら話しかけてきた。
口は忙しなく動いているのに、わたしの耳が機能していないのか、男の口が機能していないのか、無音。音だけが、届かない。
機能していないのはきっとわたしの脳ミソだ。
「……な、に、どういうこと」
喉がカラカラでうまく言葉になりやしない。助けてくれる家族も残念ながらみんな天国だ。
わたしの言葉に反応を見せた男は、何かひらめいたかのように、自分の喉元あたりを押さえた。
『―――、―――、あー、ああ~~~」
すると、無能だった耳が仕事をし出したのか男の声を拾った。
男がわたしを見て、お、と声を漏らす。


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