そして、懐かしい匂いが、鼻を掠めた。



どこかで嗅いだことがある。



でも、どこかは分からない。



「あの、どこかで私と会ったこと、ありませんか?」



彼は、ポカーンとしたかと思えば、今度は顔を手で覆って笑い出した。



その行動に、呆気を取られていると、彼は私を見つめ…



「それは、僕を口説いているんですか?」



と、微笑む。



「えっ?!

そういうつもりじゃっ!」



全身の血液が、一気に回りだすのが分かる。



「会ってすぐに口説くなんて、貴女はなかなかのヤリ手ですねぇ?」



なんて言う彼の言葉に、顔から火が出そうだ。



「違うんです!
ただ、懐かしい気がしてっ」



恥ずかしい思いから、身体を起こそうとすると、それを阻止される。



「冗談です。

少しばかり、イジメ過ぎましたか?」



その言葉に、私はムッとして、再び寝転ぶ。



「なんですか、それ。
私、本気で焦りましたよ」



「僕も最初は驚きましたよ?

この人は、僕を…


口説いているのか、と」



そう耳元に呟くものだから、私は反対側に急いで転がった。



「なっ、いつまで私を弄るんですか!」



耳を押さえて、彼を威嚇する。