私は、家の畳に、タンクトップにショートパンツという、猥らな恰好で、寝転んでいる。



8月上旬、暑さもピーク。



連日のように猛暑が続いているにも関わらず、家は"エアコンを寝るときにしか付けない"という、変なポリシーを貫いている。



汗をジットリとかいた腕や足が、畳にくっつく。



「……暑い」



口を開けば、この一言。



最近の口癖だ。



家は、築50年の木造建築。


障子窓を開け放つと、縁側が見え、更に庭が見える。



昔ながらの家の特徴なのか、庭には池があり、金魚までいる。



そんな家に住む私は、
兵藤 彌(ひょうどう いよ)。



通称、グータラ女だ。



仕事をしていないわけじゃない。



これでも、会社の受付嬢をしている。



だが、仕事がない限り、私はこうして、実家の畳に寝転び、ずっと寝ているのだ。



それが私の幸せなのだが、夏にエアコンを付けないのは、さすがに辛い。




「彌!ちょっと起きなさい!」



いまいち力の無い声に反応し、寝返りを打つ。



「なに、お母さん」



来たのは、紛れも無い母。



その上品な姿が、私には一切遺伝しなかった。