久々に感じる竹刀の感触に詠は混み上がる思いを必死で抑えて竹刀を離そうとしたがそれは華宮の手によって阻止された

竹刀を握る詠の手に一回り小さな細長い真白な手が重なった

驚いた詠は華宮を見た

「どんな理由があろうと好きなものを無理に諦めたりしなくても良いのですよ詠さん」

さっきとは違う真剣な華宮の瞳から詠は瞳をそらすことが出来なかった

「礼儀を忘れずどんなものもバネにして足を踏み込んでいけばあなたは二度と同じ過ちは繰り返さなくなるはずです。逃げる事は誰にも出来るけれどそれで後悔してはあなたは一生強くなれない」

「‘剣道は剣の理法の修練による人間形成の道’と言う言葉を忘れましたか?」と華宮はまた微笑んで詠を見た