あれから、沖田さんとはちょくちょく甘味屋や茶屋へ、土方さんに隠れて出かけるくらいの仲にはなっていた。
「ここのカステラがおいしいんだよ。値段張るけど」
「…この時代にはもうあったんですね」
「え?」
「なんでもないです」
沖田さんとの会話は、意外と気負わなくて良い。第一印象は刀突きつけてくるヤバそうな人。そのあとは敵意丸出しにしてくる人。剣を振るうことにためらいの無い人。そんな人だけれど、普段は結構緩い性格をしてる。
もちろん、私が懐いた理由は、兄に似ている、ということもある。むしろそれが大きい。
「…んん?」
「どうしたの?」
「いえ、なんか味が違うなあ、と」
「食べたことあるの?」
「………まあ」
カステラなんて、その辺のコンビニに行けば手に入るくらい身近なお菓子だ。食べたことがない、という人は少数派だと思う。
「私が食べたことがあるのは、もう少し軽口で、しっとりしてました。それと、全面狐色ではなくて、一番上面が、焦げている訳じゃないんですけど、こげ茶色なんです」
「ふぅん…江戸のか、向こうのやつなのかもね」
「そうですかね」
私が食べたことがあるのは、もちろん日本のメーカーのだ。それも都内の有名店のやつ。
「ああ、そうだ」
お茶も飲んで一息ついたとき、沖田さんがわざとらしく、思い出したように言う。
断言できる。この話がしたいがために、今日は私を誘ったのだろう。
「近い内、土方さんから聞くと思うけど、大きな立ち回りがある」
「何か問題でもあったんですか?」
「今、屯所の裏の納屋を立ち入り禁止にしてるでしょ?実は最近攘夷と通じてる人間を捕えてある」
「人、を」
「俺も詳しく知らないけどね。それで土方さんがその男を自白させた。その内容がね―――、
