私が幕末にきて、早くも半年が経とうとしていた。人の順応能力は感心するものがある。ケータイが無いし、自転車も無い。コンビニも無いし、自販機も無い。そもそも通貨がおかしい。
けれど、不思議と不便さは感じなくなった。
新撰組には女性はいないが、間借りしている前川、八木邸の女将さんたちとはよく会う上、不都合があればいつでもおいで、と言われるほど何故か親密になった。この辺りの地理もそれとなく分かってきたし、風習も、京言葉も理解してきた。
幹部の人たちとも時折話すこともあるし、手合わせすることもある。平隊士の人たちは気さくな人たちも多い。
けど、人の根本はそう変わらないものだ。
疑り深いのは性分だと思う。いつ彼らが手のひらを返すのか、疑ってしまえばきりがない。
「何も無い、かな」
今、私がいるのは、初めて来た、というのも語弊があるが、あの竹林だ。ビルから飛び降りた着地点。新撰組の屯所からそう離れていないこの場所は、あまり人も入ってこないらしい。
日が高い日中は、意外と竹林の中も明るい。
