「…ありがとうございます。でも、それでも私は人に何かを教えることなんて出来ません」
「出来るさ」
「出来ません」
「出来る。……なあ、深山。お前、さっき結局は負ける、っつたよな?」
「…はい」
「それは物を教えられない奴の言葉じゃねえ。負けるってことは、何が駄目か分かってるってことだ。ならそれを言えばいい」
「でも、」
「それに、深山、お前はつえーよ。でも、もっと磨きたいとも思わねえ?もっと高みへ行くために」
何かを志すものなら、一度はその道の思い描く頂上。
そこにいつか自分が立てたのなら。
何より、と永倉さんはびしり、と私のほうを指さして、笑い皺を浮かべるほど、屈託の無い笑みを浮かべる。
「俺がお前の剣をもっと見てえんだ」
笑顔に当てる拳は無いという。ニュアンスは違うかもしれないが、確かにそうだ、と先人が作り出した言葉に納得だ。
呆れるような、嬉しいような。実際、嬉しいのかもしれない。自分自身を求められるということが。
「分かりました。そのお話、お受けしましょう」
ただし、温和そうな局長さんと、怖そうな副長さんが許してくれるのなら。
そう付け加えれば、あの人たちだって認めるさ、と永倉さんは力強く頷いた。
