矢車の夢




「…待、!」

 気づいたときには、布団から這い出て、駆け出していた。
 男の横を抜けて、開いた障子から、そのまま通じていた中庭へと。

 裸足だなんて、気にしてられなかった。

 中庭へ飛び降りて、その場に居た、驚いたように動きを止める着物を着た人たちを押し退けるように、外へと通じる戸口へ走る。

 閂を抜き捨てて、戸口を開ければ、そこに広がるのはいつかテレビで見たような風景。
 まるで時代劇のセットのようなその景色。

 けれど、決定的に違うのは、そこに居る、人間。

「…なんなの、」