キスを落とす25箇所




「……ねえ。俺さ、思ったんだけどー」



忽然と腕を引っ張られる。

想定外の出来事にとっさに対応ができるわけもなく、あっけなくバランスを崩して、その場でたたらを踏む。


図ったのか、という絶妙なタイミングで、腕に抱きすくめられる。

食器はどうしたの、と思いつつ眼前に迫る彼から目が離せない。



「ちょ……!」

「平気だって。落ち着いて? お前の料理はちゃーんと机に置いてきたからねえー」



そんなことはどーでもいーの、と言わんばかりの焦れた瞳。

根がはったかのように私を動けなくする。


さながら魔法のようだと思った。だとしたらなんて素敵な魔法なんだろう。解けないでいいよ、その魔法。


目線で“なによ”と先を促す。



「いやさ、大したことじゃないかもしれないけどさ。思ったわけですよ」

「なにを」

「いや? そのさあ。

──お前をお嫁さんにできる俺は幸せもんだなーって」



案外さらっと言われてしまったが、当の私がさらっと流せない。


思わず顔を真っ赤にさせて口をパクパクとさせていると。



「料理もいいけどこっちも美味そうだねえー」



パクリ。大きく開いた口が、私の手首に噛みついてきた。