キスを落とす25箇所




「あはは、冗談だってー。半分本気だけど」



そう言ってケラケラとひとしきり笑った後、彼は言う。



「はやくおいで。せっかくのご飯が冷めちゃうよー」



誰のせいだよ。

そう思いながら、私も言う。



「うん。今行くよ」



止められない期待と言いようのない不安が、胸の内を渦巻く。

気を抜けば溢れてしまいそうなそれを必死に押し留めて、私を待ってくれているらしい彼のもとへと、一歩踏み出す。



──私の手料理が、彼の口に入るまであと少し。


これから、彼が私の作った料理を食べることによって、それが彼の体内で生きる糧となる栄養として取り込まれて、そうしてそこから作り出されたエネルギーを消費して、彼は私に笑いかけてくれるのだろう。


その過程を思うと、胸がいっぱいになる。


理科なんて得意じゃなかったから、果たしてその知識が正しいのかは自信がないし、こういう思考が一種の狂気じみていることも自覚している。


……でも、その時を思うとたまらなくなる。


私が、彼の存在をつくっているみたいで、嬉しいのだ。