──“まとも”ってなによ、“まとも”って。

それは何を基準にしての言葉なの。何が基準なの。


別に、上から目線で、生意気よ! とか言うつもりはないけれど、いや、ほんとはちょっとくらいあるのだけれど、でも、なんか引っかかる。なにかが引っかかる。


第一、私の作るもんが“まとも”じゃわるいっていうわけ?

丹精こめて腕によりをかけて、お料理しているっていうのに?


…なのに、“まとも”って。

他の言いかただってあるはずでしょう?


ムクムクと湧き上がる不満に、私は不器用な笑顔しか浮かべられない。



「──ねえ。

“まとも”って、どういう意味かなあ?」




にこにこと口角は持ち上げていられるのに対し、肝心の目が全然笑えていないのは、重々承知である。

承知のうえで、“あててんのよ”ならぬ“やってんのよ”と開き直りたい。開き直ってみたい。