桃の話を聞いて、出てくる言葉はない。



分かったのは、小林が桃のことを好きすぎて、周りが見えなくなったってこと。


桃が好きだから、他のやつとしゃべるだけで嫉妬した。




「あたしは、お互い高校が決まった時に“もうバイバイだね。今までありがと”って言ったの。あたしは、これが別れの言葉のつもりだったんだけど……」




桃はそう言うと、苦笑いをした。


そんな桃の体はやっぱり震えていて、思い出して怖くなったんだろうか。




小さい体で、そんな恐怖と一人で戦っていたなんて。


どれだけ苦しんで、どれだけ泣いたんだろう。




ムカつくけど、桃があいつのことをすげー好きだったってことが伝わってきた。




だから余計苦しかっただろうな。


俺は、なにも言わずに膝の上で握りしめている手の上に自分の手を重ねた。