「廉……」
そうつぶやいたと同時に、玄関で音がした。
廉だ!
気付いたときには、もう走り出してた。
「れ……」
だけど、声を掛けることはできなかった。
「……萌、早くまた会いたいよ」
も、え……?会いたい?
確かに、廉の声だった。
なんで?
……やっぱり浮気してたの?
電話で話す廉は、あたしに気付かなかった。
しばらく動けなくて。
やっと立てるようになったときには、もう廉の部屋の明かりは消えていた。
「寝ちゃったのかな……」
きっと、廉はあたしが聞いていたことなんて知らないんだろうな……
そう思うと、また涙があふれてきた。


