「沖田さん。なんでこないなところに。」
 
マオリの斬った男たちの検視を終えた山崎が現れた。
今夜も乞食の格好をしている。

「ああ、山崎さん、お勤めご苦労さまです。」
 
沖田は山崎にも薄い笑顔を向けた。

月明かりのせいにしては頬がこけて見える。

新撰組の一番隊組長といえば、
いつだか山崎が語った新撰組の中でも土方を凌ぐ剣術の使い手だと
聞いたことがあるが、そうは見えない。

マオリもそう感じたのか首を傾げて沖田を見上げた。

「この子を見に来たんだ。
 あんまり活躍してくれるから、私はお払い箱ですよ。」
 
薄い微笑みが冷たく影を帯びた。

「何言うてまんねん。
 こないな冷える夜に出はったら体に障りまっせ。」
 
山崎は心配そうに声をかけた。
底冷えのする冷気が夜の町におりてきている。
 
マオリはしんと張った空気をたたえた夜空を見上げた。
 
かすかに、遠くから足音がしてくる。
三人、いやもっと多い。