フクロウの声

おれはまだ余韻に浸っていたかったが、
マオリの体がどっと疲れたのを感じ、
大人しく有松へ戻ることにした。

雲はひいて、半分だけの月がさらに明るく輝いている。


汗をぐっしょりかいたマオリが有松へ戻ると、
裏口で寝巻きに一枚羽織った姿でおかみが待っていた。

ふらふらとマオリはおかみに倒れこんで、
おかみは優しくマオリを抱きかかえた。

やわらかいおかみのにおいがマオリを温かく包み、
強い力で抱きしめた。

「おっかあ・・・。」
 
そう、ほとんど気を失ったマオリが無意識に小さく漏らしたのを、
おかみは聞き逃さずにさらに強く、マオリを抱くのだった。


弟たちはマオリが少しでもそばを離れると、
泣いてマオリを呼んだ。

下の弟を生んですぐ死んだ母の代わりに、
マオリは二人の弟を育てていた。

マオリが弟をあやしていると、父が呼んだ。
祖母が体を壊してからは、マオリは重要な畑仕事の働き手となった。

いつも、誰かがマオリを呼んでいた。

呼ばれるたびにマオリはそこへ行き、求められるままに働いた。
何がしたいと思うまもなく、マオリは過ごしてきた。