フクロウの声

少し、着物が汚れてしまった。
洗って落ちるだろうか。
 
マオリは倒れてどくどくと血を流す男たちを前に、
着物の裾に梅の花が咲いたように点々と着く血の染みを気にした。

「たいしたもんやな。」
 
山崎がマオリに声をかけ、
膝をついて三人がこと切れているのを確認した。

「ほとんど返り血も浴びひんとは。」
 
山崎は立ち上がって、まじまじとマオリを見つめた。

「少し・・・着物を汚してしまいました。」
 
マオリは袖を広げてみせた。

「わざわざ白い着物仕立てるなんて、土方さんも何考えてんのやろな。」

「着物を用意したのは土方さんなんですか?」
 
マオリは山崎に聞き返した。

有松に預けられてから、
連絡役として山崎が姿を見せるだけで土方は有松に現れていなかった。

「そうや、おまえが返り血も浴びん使い手だとわかってたんやな。」
 
山崎は手ぬぐいを被り直し、立ち去ろうとした。

「でも、私は土方さんに負けました。」
 
マオリも後を追うように死体から離れた。

「当たり前や。土方さんやで。
 新撰組にはもっとごっつう強いやつもおるで。」
 
山崎は振り返ってにっと笑った。

「そしたら、なぜ私なんか・・・。」

「だいぶ田舎訛りが抜けたやないか。そやな・・・
 使える思ったんやろ。」
 
秋の風がすっと吹いた。
マオリの汗を撫でていく。