フクロウの声

マオリは駆け出した。

惚れ惚れするほど足音がしない。
まるで低空を飛ぶフクロウのようだ、
とおれが言うのもおかしいか。
 
腰に差した刀に手をかける。
橋の手前に立ち、
提灯の灯かりが近づいてくるのを待った。

「ん、なんだおまえは」
 
三人組の中の一人が、
暗闇に灯かりも持たずに立っているマオリに気がついた。
 
この中の誰を斬るのだろう、そういえばそれは聞いてなかった。
 
そんなことをマオリは思う。
おれは笑い飛ばしてマオリに言った。

誰でもいい。三人とも斬ればいい。
行け、マオリ。
 
男たちはマオリが刀に手をかけているのに気がついた。

「おまえ、刺客か!」
 
慌てて持っていた提灯を放り投げて刀を抜いた。
落ちた提灯の火が消えてあたりは暗闇に包まれる。
 
かえってマオリには有利に働くとも知らずに。

月明かりだけで、
マオリには男たちの様子が昼間の直射日光に当てられているかのように
はっきりと見て取れる。

「いやぁぁぁっ」
 
奇妙な声を上げて一人の男が袈裟に斬りかかって来た。