「確か、おめえが見つけて来た娘は今夜が初仕事だったな、トシ。」
えらの張った顔の大きな男が土方に声をかけた。
この男が近藤勇といい新撰組を束ねる局長である。
「ああ。」
と土方は所在なく返事をする。
屯所の庭には人影はなく、
二人の男の影だけが砂利に落ちている。
「心配そうだなァ。」
「そんなこたぁねえさ。山崎もつけてある。」
壬生狼と京の人々に恐れられる新撰組を束ねるのが
この二人であったが、二人きりの時には故郷の言葉が出る。
「おめえは鬼の副長と呼ばれちゃいるが、
年端のいかねえ娘を鬼にするのに心が痛まねえこともねえんだろ?」
近藤は眉を大きく八の字に曲げて土方を覗き込んだ。
「馬鹿言っちゃいけねえぜ、近藤さん。
俺ァ新撰組のためならば鬼にだってなるぜ。」
土方はそう言って拳で近藤の広くがっしりとした肩をこつんと叩いた。
「それにあいつぁ、きっと活きるぜ。」
土方は雲にかすんだ半月を見上げた。
たおやかな総髪が夜風に吹き上げられる。
ざあっと、木々の葉の鳴る音が舞い上がる。
えらの張った顔の大きな男が土方に声をかけた。
この男が近藤勇といい新撰組を束ねる局長である。
「ああ。」
と土方は所在なく返事をする。
屯所の庭には人影はなく、
二人の男の影だけが砂利に落ちている。
「心配そうだなァ。」
「そんなこたぁねえさ。山崎もつけてある。」
壬生狼と京の人々に恐れられる新撰組を束ねるのが
この二人であったが、二人きりの時には故郷の言葉が出る。
「おめえは鬼の副長と呼ばれちゃいるが、
年端のいかねえ娘を鬼にするのに心が痛まねえこともねえんだろ?」
近藤は眉を大きく八の字に曲げて土方を覗き込んだ。
「馬鹿言っちゃいけねえぜ、近藤さん。
俺ァ新撰組のためならば鬼にだってなるぜ。」
土方はそう言って拳で近藤の広くがっしりとした肩をこつんと叩いた。
「それにあいつぁ、きっと活きるぜ。」
土方は雲にかすんだ半月を見上げた。
たおやかな総髪が夜風に吹き上げられる。
ざあっと、木々の葉の鳴る音が舞い上がる。

