約束の日。
日が沈み、客たちでにぎわう有松の座敷の奥で
マオリは山崎から届けられた着物を行李から出して袖を通した。
夜動くには不自然な白い着物だった。
おれは白い色が好きだから、
不自然には感じたがさして気に留めることもなかった。
女物にしては細めの帯を締める。
なるほど、これは動きやすそうだ。
帯も白を基調としたもので金色の刺繍が施してある。
俺の刀と似ていてなかなかしゃれている。
腰には袴のような、ももひきのようなものを身に付けた。
その為少し着物の裾は短く仕立ててある。
マオリは黒く長い髪を後頭部に寄せ集めて結い上げた。
心なしかマオリの面差しもきりりとしたように見える。
頭には鉢金を巻いた。
おれの授けた白い刀を腰に差すと、
マオリは部屋を薄暗く照らしていた火をふうっと息をかけて消した。
部屋が月明かりで浮かび上がる。
音もなく障子を開けると、マオリは廊下に出た。
うっすらと雲のかかった夜空に半月が浮かんでいる。
マオリは月を見上げて浅く息を吸い込むと、
裏口へ早足で向かった。
磨き上げられた床がひんやりとした感触を足の裏に伝える。
誰かに見とめられることのないように気を配りながら
わらじの紐を締める。
仕事の途中でゆるんだりすることのないよう、
少し痛いほどにマオリは締め上げた。
人気のないことを確かめて裏口から素早く通りに出た。
夏が終わったことを感じさせる、
冷えた空気を含んだ風が通っていく。
日が沈み、客たちでにぎわう有松の座敷の奥で
マオリは山崎から届けられた着物を行李から出して袖を通した。
夜動くには不自然な白い着物だった。
おれは白い色が好きだから、
不自然には感じたがさして気に留めることもなかった。
女物にしては細めの帯を締める。
なるほど、これは動きやすそうだ。
帯も白を基調としたもので金色の刺繍が施してある。
俺の刀と似ていてなかなかしゃれている。
腰には袴のような、ももひきのようなものを身に付けた。
その為少し着物の裾は短く仕立ててある。
マオリは黒く長い髪を後頭部に寄せ集めて結い上げた。
心なしかマオリの面差しもきりりとしたように見える。
頭には鉢金を巻いた。
おれの授けた白い刀を腰に差すと、
マオリは部屋を薄暗く照らしていた火をふうっと息をかけて消した。
部屋が月明かりで浮かび上がる。
音もなく障子を開けると、マオリは廊下に出た。
うっすらと雲のかかった夜空に半月が浮かんでいる。
マオリは月を見上げて浅く息を吸い込むと、
裏口へ早足で向かった。
磨き上げられた床がひんやりとした感触を足の裏に伝える。
誰かに見とめられることのないように気を配りながら
わらじの紐を締める。
仕事の途中でゆるんだりすることのないよう、
少し痛いほどにマオリは締め上げた。
人気のないことを確かめて裏口から素早く通りに出た。
夏が終わったことを感じさせる、
冷えた空気を含んだ風が通っていく。

