フクロウの声

マオリはますます赤くなって下を向く。

さきほどおかみと愛想よく言葉を交わしていた山崎とは
まるで別人のような態度であった。

「副長もとんだ山狸を拾ったもんや。」
 
山崎はマオリの手から手紙を奪い上げると、
パンと音を響かせて紙を伸ばし、読み上げた。
 
ろうろうと、しかし低い声をひそめて殺人の指示を読み上げる
山崎の声でおれは目が覚めた。
 
ゆっくりと羽を広げてからだを伸ばす。 
かたかたとわずかに震えているマオリの肩におれはとまった。
 
なるほど、この山崎という男も薬売りの格好をしてはいるが、
刀を抜けば相当のものだろう。

現に、杖らしく装っている傍らのあれは仕込み刀である。
あの土方が束ねる新撰組というところには
おもしろい男がごろごろいるらしい。

これはおもしろい。
おれは目を細めた。

「なんや、聞いとんのか。」
 
山崎は読み終えるとマオリを不満そうに斜めから見おろした。
 
聞いているとも。

一言も漏らさずにおれは覚えた。

マオリはこくりとうなずいた。
かすかに瞳が金色を帯びた。