「土方副長に聞いてはおったが、ほんまに娘やねんやな。」
 
山崎はぬっとマオリに近寄って、
しげしげと顔を見てくる。

マオリは遠慮のない山崎の行動にむっとして目をそらした。
 
マオリの態度が気に入らなかったのか、
山崎はすぐにマオリから離れ、
薬箱の中から手紙を取り出した。
 
すっと、マオリに差し出す。

「仕事や。ここに書かれとる場所、刻に通る男を斬れ。」
 
山崎は声をひそめた。
 
マオリは言われるがまま、畳に投げ出された手紙を広げた。
細く達筆な字を追う。

「現場には俺もおる。何やあれば俺を呼べ。」
 
そう言うと山崎は立ち上がろうと薬箱の紐に手をかけた。

「あの・・・。」
 
マオリは焦って山崎に声をかけた。

「なんや、質問やったら受けるで。」
 
山崎は座りなおした。

「おら・・・字は読めん。」
 
マオリは顔を真っ赤にして声を絞り出した。

「はん。字はって、ほならおまえは何ややったら読めるのや。」
 
山崎はあざ笑うように言った。