「マオリ・・・。」
 
マオリは答えた。

「そうか。マオリというのだな。」
 
マオリはおずおずとうなずいた。

「京にはおまえの居場所がある。
 おまえを必要としている。
 こんなところで死ぬことはない。」
 
土方歳三と名乗った男は、
血がついて固く絡まったマオリの黒い髪を撫でた。
 
土方の狙いは、おれを宿したマオリの超人的な力だとわかった。
それを利用しようとしているのだろう。

しかし、居場所。
その言葉はマオリにとって土方のその言葉は
折れきった幼い心を癒すにはあまりあるものだった。
 
マオリの瞳からぽとりと涙がこぼれた。
 
どこからか、この季節にそぐわない梅の香りが淡く漂っている。