フクロウの声

ふ、孤立無援か。

おれは笑った。
マオリ、今も昔もおれに味方なぞ、いたためしがない。

おまえも忘れることがないだろう。
父を、祖母を焼き殺した村の人間どもの目が。

おれはおまえに手を貸そう。
誰も味方なぞいなかったおれが、唯一おまえの味方になろう。

さあ、刀を抜け、マオリ!
 
マオリの震えが止まった。
背中にじっとりと出ていた汗が引いていく。
体温が体の中心に集まってくる。
両手でしっかりと刀を握りこむ。
 
マオリを襲撃した男たちの目には、
さぞ恐ろしいものが映ったことだろう。
 
おれは大きく両翼を広げた。

月明かりを透かす障子を背にしたマオリから羽が生えたような影が
障子に浮かび上がった。
 
男たちの目がみるみる恐怖に見開かれていく。

「うぉぉぉっ!」
 
一人の男が斬りかかって来る。
思いっきり頭上から刀を振りかざしている。

力まかせに振り下ろされた一撃をマオリは転がってよけ、
刀はぼふんと布団に食い込んだ。
と同時に刀を抜いて男の足首めがけて低く薙ぎ払う。

「ぎゃぁぁっ」
 
マオリの刀は男の両足を切断した。

男は悲鳴をあげて、
マオリの寝ていた布団に転がった。
白く柔らかな布団に血が飛ぶ。