フクロウの声

かすかだが、あやしいにおいが漂っている。

人が人を狙うにおい。

マオリの家を村の人間どもが襲った夜も、
同じにおいが立ち込めていたことを思い出す。
 
マオリの体が回復したならば、
一刻も早くここを立ち去るべきだと思った。
 
マオリは刀を枕元に置くと、すやすやと眠りについた。
 
おれは夜ほど目が冴える。

すうすうと安らかな寝息を立てるマオリの胸が上下する。
おれは刀の鍔にとまり、
障子から漏れる月明かりを見ていた。
 
昼間見た藍色の着物を着た、
蛇の目をした男のことが思い出される。

今夜を無事に過ごすことができたら、
すぐに宿場を立とうとおれは決めた。
 
おれは死神だ。
しかし、マオリの体に宿っている以上、
不必要な争いごとにマオリが巻き込まれるのは得策ではない。
 
マオリはまだ不完全だ。

かすかに夜の空気が動いたのは、子の刻を過ぎた頃だった。
 
おれは首をぐるりと回して、空気の振動を辿った。
 
何か来る。