祠の中を開けろ。
 
マオリははりぼての人形のように、
おれの言うままに祠に近づいた。

くすんだ朱色に塗られた祠の扉を開けると、
朽ちかけた木の軋む音がぎぃぃっと不気味な音を立てる。

茶色く変色した注連縄は片側のみでぶらさがっている。
明かりはなかったが、マオリにも祠の中は見えていた。

刀がある。
おまえにやろう。
 
マオリは狭い祠の中に膝をついて入り、
鎮守されていた白い鞘の刀を取り出した。
 
刀は埃をたっぷりとかぶっており、
すぐにその白い色を判別することができないような状態だった。
 
マオリは自分のぼろの着物でその埃を拭き取った。

刀はすっと長い白い鞘におさまり、鍔は金色だった。
柄も白く装飾され、
白い羽根をかたどった文様が施されていた。

身を守ること以上に使えるだろう。
 
おれもこの刀を見るのは久々だった。

かつておれを祀った人間たちが畏怖と畏敬をこめて、
おれの姿を刀にしたものだった。

真っ白いその装飾をおれなりに気に入っており、
少しずつ気を送り込んで、刀が錆びついてしまうのを防いできた。
気まぐれといえば気まぐれだ。
 
マオリはじっと刀を見つめていた。

気に入ったか。
 
おれは刀を見つめるマオリに声をかけた。
マオリはすっと刀を抜いた。
細い月の光が刀身に注いだ。
おれとマオリには眩しいほどの反射だ。
思わず目を細める。