フクロウの声

弟の屍を抱いたまま、
虚ろに空を見つめていたマオリも夜になって
おれの力が満ちてきたとみえ、のろのろと動き出した。

弟はすでに石のように固くなっており、
幼い体といえど、マオリは抱きかかえるのに難儀していた。

マオリは沈んだ瞳のまま、
おれがいつも村を見下ろしていた大樹の下に弟をおろし、
固い土を手で掘り出した。

がりがりと木の根に指先が当たるのもおかまいなしに、
マオリは土を掘り続ける。

野良仕事で固くなったマオリの指先でも、
土を掘り続けていると爪の先に血が滲むようになった。

黒い土にマオリの指先から滲んだ血が染み込んで、
すぐにその存在を消していった。

やっと弟を埋めることのできる大きさの穴を掘り終えた頃には、
マオリの両手の爪は剥がれかけていた。

マオリは、掘った穴に弟を横たえた。

やんちゃ盛りのかわいらしかった弟のおもかげはどこにもなかった。

空洞になった片目が恨めしそうにマオリを見上げている。
半分開いた口元から、蛆が出てきてぽとりと落ちた。

マオリは掘り返した土を両手ですくい、弟にかけていった。

固かった土はマオリに掘り返されて柔らかくなり、
夏の夜の湿気を含んでしっとりと冷たく弟を包んでいった。

大樹の根元に墓ができあがった。

マオリは手水場の腐りかけた柄杓で水を汲み、
小さな弟の体ぶん盛り上がった墓土にかけた。