フクロウの声

マオリ、やめろ。もう死んでいる。
そいつは土に還る。
 
おれはマオリに呼びかけた。
おれの声が聞こえたのかマオリは蛆をつまむ手を止めた。

ぽとり、とマオリの涙が上の弟の目玉のなくなった赤黒い空洞に落ちた。

「嘘をついたんか・・・。」

マオリの声が震えて、マオリの中におさまったおれに届いた。

おまえが寝ているあいだに死んだんだ。

おれはすまして答えてやった。

「おめは・・・生きていると言ったでねえか。」

その時は生きていたのだ。

「嘘つきめ。」
 
マオリは肩を震わせて泣いた。

細い銀の鉄線を濡れた指でなぞるような、
か細いすすり泣きが夜にのぼっていった。
 
おれは弱々しいマオリの泣き声を聞きながら空を見上げた。

助けを求めて伸ばした手の爪で
ひっかいたような細い月が出ていた。

おれは夜のほうがいろいろなものがよく見える。
それはおれが乗り移ったマオリも同じようだった。