フクロウの声

マオリは太陽が照りつける熱で目を醒ました。

体が自分のものでないようだった。
痛みはない。

昨夜、昨夜だろうか、随分遠い時を隔てているようにも思える。
あれだけの火傷を負ったというのに。

目覚めているのに、体を動かすことができない。
太陽の光が視界を揺らめかせている。
自分の意思で動かすことのできない手が見える。

その向こうには、上の弟が倒れているのが見える。
めざとく集まった蝿が上の弟の小さな耳のそばを飛んでいる。

マオリはその蝿を払おうと手を伸ばそうとしたが、
意思は体に届かない。

再びまぶたを閉じた。

まぶたの裏の赤い闇に沈み込むとマオリは眠りに落ちた。

マオリ・・・マオリ起きろ、もう夜だ。
 
おれはマオリの中からマオリに呼びかけた。
昼間、意識を一瞬取り戻しただけで、マオリは目覚めなかった。

それは、少なからずおれの力が及ぼしているものだ。
おれは夜に目覚める。
昼間は樹の上でじっとしている。

マオリの体の奥で、マオリが目覚めるのを感じる。
ゆっくりと暗い意識の深淵から、
マオリが浮かび上がるのをおれは待った。
 
意識を取り戻したマオリは目を開け、ゆっくりと起き上がった。
判然としない様子であたりを見回している。